イケメン兄の甘い毒にやられてます
夕陽は、圭吾の胸に顔を埋めているため、圭吾には、今夕陽がどんな表情なのかは、全くわからない。

でも、圭吾の服を掴む手に、力が入ったのは分かった。

「…夕陽」
「…はい?」

「…俺の話を聞くのが怖い?」
「…そんな事ないですよ」

そんな事あるのに、強がる夕陽をお見通しな圭吾は夕陽の顔を両手で挟むと、自分の方に向けた。

…夕陽の目が揺れている。

不安で仕方ないと言った顔だ。

「…夕陽は嘘つきだな」
「…嘘なんて」

「…俺には全部お見通しだよ?どれだけ夕陽の事を見てると思ってるの?」

「…圭吾さん、私」

「…強がりで、意地っ張りで、怖がりで、寂しがりや」
「…」

「…そんな夕陽と一緒に住みたいんだけど」
「…」

言葉は聞こえてるのに、理解するのにかなり時間を要した夕陽はキョトンとした顔で圭吾を見た。

それが手に取るように分かった圭吾はクスッと笑う。

「…夕陽俺と一緒に住んでください」
「…うそ」

離ればなれとは、正反対だった圭吾の言葉に、夕陽はただただ目を見開く。

「…もう、離れてなんて暮らせない。一人きりはもう懲り懲りなんだ。俺は大好きな夕陽とずっと一緒にいたい」

「…」

「…夕陽、答えを聞かせて?」

頬を優しく撫でながら、圭吾は夕陽の答えを待った。

「…私、」
「…うん?」

「…私、も」
「…うん」


「…圭吾さんとずっと一緒にいたい、です」

言い終わる頃にはポロポロと涙がこぼれ落ちていた。

「…フッ…泣き虫なのも追加しないとね?」
「…もぅ…意地悪言わないで下さい」

「…今週末、引っ越しておいで。俺も仕事休みだから」
「はい!勿論行きま…」

今週末…日曜日。

夕陽には、大事な約束があった。

だから、夕陽は躊躇った。
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