イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…夕陽、神藤先生が隣にいるんだけど、どう言うこと?」

…日曜日、待ち合わせ場所に来た優の第一声がこれだ。

「…だから、ダメだって言ったじゃないですか?圭吾さん」

困惑の表情で言った夕陽は、圭吾と優を目だけで見比べる。

怪訝な顔の優。

それとは対照的な、してやったりの圭吾の顔。

「…圭吾さん、やっぱり今日は、優くんと二人の方がいいです」

「…優くん、俺がいるとまずいかな?二人きりの方がいい?」

「…ぅ、それは」

良い大人の圭吾が見せた、捨て犬みたいな目付きに、優は一瞬怯む…と。

「…優くん、いいよ。二人でいこう」
「…いや、3人で行こう。それで良いですよね?神藤先生?」

優の言葉に、圭吾は目を輝かせた。

「…ありがとう、優くん」
「…いいえ」

嬉しそうな圭吾と、げんなり顔の優。

夕陽は苦笑いしつつ、行きたい場所に向かうことにした。

イケメン二人に挟まれた夕陽は、周囲の目をひいた。

羨ましがる声、妬む声、批判の声…

夕陽はいたたまれなさで一杯だった。

それに、同時に二人が気づいた。

少しやり過ぎたかと、圭吾は反省しつつ、人気のない場所へ誘導。

「…夕陽」
「…何ですか?」

「…3人で、映画見ようか、ね?」
「…そうですね、今、話題の映画気になってたんですよね、俺。夕陽が行きたいところは、また今度付き合うよ、いいだろ?」

「…二人とも」

「…さぁ、行こう行こう」

二人の優しさに感謝しつつ、映画館へ向かった。
< 117 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop