イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…ちょっと!優くん、いい加減離して!」

必死に抵抗していた夕陽がようやく掴まれた手を払いのけた。
「…夕陽」

「…どうしたの?急にこんなこと。圭吾さんに何も言わずに出てきちゃって。帰ろう、優くん」

夕陽の言葉に、優は首をふる。

「…どうして?何でこんなことしたの?」
「…今日は…今日は夕陽と二人きりでお出かけだと思って、楽しみにしてたのに」

悲しげな顔を浮かべ、優が言った。

そうだ。今日は、優と二人で出掛けるはずだった。

「…ゴメンね、優くん。私がちゃんと断らなかったから。本当にごめんなさい」

夕陽は謝って、頭を下げた。

「…夕陽に、謝ってほしい訳じゃない」
「…?」

優の言葉に、夕陽は困惑する。

優は何が言いたいのか?一体、何を考えているのか?

「…夕陽」
「…何?」

「…夕陽は、神藤先生が好き?」
「…うん」

「…これから先も、ずっと一緒に居たい人?」
「…うん、…優くんどうしちゃったの?何が言いたいの?」

「…俺も、夕陽が好きだよ」
「…え?私も、優くん好きだよ?」

夕陽の言葉に、優は力なく笑う。

「…友達としてじゃない」
「…優くん?」

「…俺は、夕陽を、一人の女性として好きだっていってるんだよ。夕陽が、神藤先生を想うように、俺も、ずっと夕陽を想ってる。この先、夕陽と、一緒に居たいと思ってる。俺の気持ちに、夕陽は全然気づいてくれないから。今日は、伝えたかった」

「…知らなかった…そんな事、優くんが、私の事好きだったなんて」

夕陽はずっと、優は大事な友達だった。

だから。

「…優くん、私は」
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