イケメン兄の甘い毒にやられてます
夕陽の言葉に、春人は目を見開いた。

「…それって」

…それって、男として見てるってことだろ?

春人は心の中で言った。

口にしてしまえば、夕陽がまだ気づいていない自分の気持ちに気づいてしまう。

今は少しの違和感だけですんでるが、それが『恋』だと気づくのにそう時間はかからないだろう。

「…私、圭吾さんのこと、嫌いなのかな?」
「…は??」

何でそうなる?と、心のなかで突っ込んだ春人。

「…ダメだよね。パパの息子なんだから、お兄ちゃんなんだから、好きにならなきゃいけないのに」

「…嫌いなままでもよくね?」
「…え?」

…好きになられては困る。夕陽が圭吾のモノになるなんて、許せない、許さない。自分の方が、ずっと前から夕陽の事が好きなのに。

「…無理して好きになる必要なんてないだろ?夕陽はもう高2だぞ。何時までも一緒にすんでる訳じゃないんだし。いつかはあの家を出ていくんだから、今のままで十分だろ」

「…そうかな」

…あぁ、こんな時にまで、夕陽に想いを告げられないなんて、なんて小心者なのかと、春人は心の中で嘆いた。

「…そうそう。夕陽には、俺も、咲もいるんだし。な?あんまり深く考えるなよ」

「…う、ん」

…二人の間に、何とも言えない空気が流れた。

「…おーい!二人ともー!いつまでもそんなところにいんのよ!私を一人にしないでよ!」

2階の教室から、咲が叫んでいる。

「…ごめーん!今から帰るよ、行こう、春人」
「…うん」
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