イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…夕陽」
「…何?」

「…お前ってさぁ、好きなやつとかいんの?」
「…えー…」

いないと直ぐに答えようと思った。でも、言葉に詰まった。

「…いるんだな」
「…いるわけないじゃない。いないよ、いない」

好きではない。ただ、…気になるだけ。そう、それだけ。

「…どうしてそんなこと聞くの?」
「…それはだな」

春人は焦らしてその先の言葉をくれない。

「…ただ、聞きたかっただけなんだね」

夕陽の言葉に、春人は自転車を止めた。

…丁度、夕陽の家の前だった。

「…俺、夕陽の事が好きなんだ」
「…うん、私も春人の事が好きだよー。咲だって、大好き。二人とも、私の大事な存在」

「…それじゃダメなんだ」
「…春人?」

「…友達とか、幼なじみとかじゃなくて、俺のこと、一人の男として好きになってよ」

思いがけない告白に、夕陽は驚きを隠せない。

夕陽の驚きように春人は笑った。

「…春人は幼なじみで、唯一の男友達で、えっと」
「…夕陽、さっき、好きなやついないって言ったけど、多分いるとおもう。まぁ、好きになったのかどうかはわかってないみたいだけど」

「…っ」
「…それくらいの想いなら、まだ、俺の入る隙くらいあるだろ?だから、考えて。よく考えて、返事して。じゃあな」

「…ぁ、春人!」

春人は夕陽に背を向けて走り出した。夕陽に名前を呼ばれたが、振り返らずに、手だけ上げてふってみせた。


…一大決心して、長い長い片想いを終わらせるために告白した春人。

その顔は、緊張で強ばってて、夕陽にそんなかおを見せられなかった。
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