イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…春人が?何で私を?」

幼なじみの春人。咲と春人と夕陽の3人で、どんな時も一緒にいた。

楽しいとき、悲しいとき、辛いとき、イタズラして怒られたとき、3人なら、怖くなかったし、楽しかったし、幸せだった。

過保護過ぎる春人は、人を放っておけないそんな子だと思ってた。

でも、違った。

よくよく考えてみたら、過保護なのは、いつも夕陽だけだった。

咲とはケンカ友達って感じだった。

周囲の友達とは、付かず離れずくらいの距離感だった。

…春人の気持ちに気づいてないのは、夕陽だけだった。

「…考えなくちゃ」

そんな言葉が口をつく。

それはわかっているけどちらつく顔がある。

…独りぼっちの部屋の中、夕陽が思い浮かべるのは、朝陽じゃない。学でもない。咲や春人でもなった。

…夕陽が寂しい思いをしないように、怖い思いをしないように、いつも相手をしてくれて、寄り添ってくれて、抱き締めてくれた。

「…圭吾、さん」

口をつけば、寂しさが全身に広がる。

「…あー!!!ダメダメ!」

寂しくなんかない。気のせいだ。

夕陽は思いをかき消すように、料理をして、一人で食べて、お風呂に入って、自分のベッドに潜り込んだ。

…落ち着かない…眠れない。

ピリリリ。

「…はい」
『夕陽、起きてた』

一番聞きたかった声。
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