イケメン兄の甘い毒にやられてます
昨日は、そんな事一言も言ってなかっただけに、夕陽は驚きを隠せない。

「…歩いていけるよ」
「…うん、そう言うと思ったから、昨日は、言わなかったんだよ。ほら、乗って」

後ろに乗るよう促す春人。

夕陽は躊躇って乗ろうとしない。

「…夕陽、遅刻する、早くしろよ」
「…わかったよ、乗るよ」

春人に急かされようやく自転車の後ろに乗った夕陽。春人はそれを見て、すぐさま自転車を発進させた。

「…ちょっと!そんなに早くこいだら落ちる!」
「…ちゃんと掴まれ!」

「…春人!」

春人にしがみつく夕陽。

春人は可笑しくて笑っている。

夕陽が怖がることをよく知ってる春人。

夕陽は遊園地に行っても、怖いから絶叫系のアトラクションには、絶対乗らない。

自転車だって、荒く運転されると怖くて仕方ないよう。

「…もう、春人、お願いだから、普通にこいでよ!」

半泣きになった夕陽に気づいた春人はハッとして自転車を停めた。

「…ゴメン、やりすきた」
「…知ってるくせに!春人ばか!」

「…ゴメン、ゴメン」
「…」

ふくれる夕陽の頭を撫でる春人。

そんな二人を周囲は恋人同士にしか見えていないことだろう。

「…あれは」

そんな二人の横を、一台の車が通りすぎた。

それは、圭吾の親友で、同じ内科医、仙崎だった。
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