イケメン兄の甘い毒にやられてます
学校の中では、春人は今までと何の変わりもない。告白したなんて無かったみたいに、ごく普通に。

春人なりに、夕陽の事を気遣ってのことだった。

「…今日は3人で帰ろうね」
「…あれ、部活は?」

教室の中、咲の言葉に、夕陽が首をかしげる。

「…もう、テスト発表でしょ?部活はお休み~」
「…あ、そっか、そっか」

…と、言うわけで、3人で下校する事に。

自転車を押す春人。その横を歩く咲。夕陽は、春人の自転車の荷台に座っていた。

「…久しぶりにどっか寄っていこうよ。私、クレープ食べたい」
「…どっかって、行き先決まってんじゃん」

咲の言葉に、突っ込む春人。夕陽は笑って頷く。

「…なんか、正門のとこ、騒がしいね?どうしたんだろ?」
「…さぁ」

人の間を抜けようとした時だった。

門にもたれ掛かるイケメンが一人。

「…誰だろ?」

咲が言う。

「…スーツ着てるな。大人」

春人も言う。

…あ、顔をあげた。その人は、3人の方を見て、笑みを浮かべた…が。

あり得ない状況に、不機嫌な顔になる。

無言で人混みを抜けて、3人の目の前に。

「…夕陽、帰るぞ」
「…え、ちょっと、圭吾さん?!」

自転車の荷台から夕陽を抱き上げた圭吾。なぜ、そんなに不機嫌な顔に?

「…圭吾さん、私これから友達と」
「…怪我人は、さっさと帰る。ゴメンね。夕陽連れて帰るから」

咲は呆気にとられて、コクコク頷く。

が、春人はそうはいかない。

圭吾の腕を掴んだ春人。
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