イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…おやすみなさい」
「…おやすみ」

お風呂に入った夕陽が、リビングで仕事中の圭吾に声をかけた。難しい本を開いてパソコンと本を交互ににらめっこ。

仕事の邪魔は出来ないと、早々に自室に入った。

テストも近いことだし、勉強しよう。

そう思い、夕陽はデスクに向かった。

…勉強を始めて約二時間。

背伸びした夕陽は何か飲もうとキッチンへ。

…リビングは、まだ、明々と電気が点いている。圭吾もまだ、仕事中なのだろう。

コーヒーでも淹れてあげようかな、なんて思い歩いていくと…何やら話し声。

「…静、悪かったよ。今度埋め合わせするから」

…静?相手は女性だろうか。そんな名前なんだから、女だな。

立ち聞きするつもりはないけれど、なんだか出ていき辛い。

「…え?好きだよ。あぁ、当たり前だろ?あぁ、わかった。じゃあな、おやすみ」

…好きだよ?

夕陽は自分の耳を疑った。

圭吾の口から愛の言葉。それも、静という女性相手に。

…さっき、夕陽に好きだと言った言葉は?

…彼女になってくれたらって、言った言葉は?

夕陽の胸の中は、凄くモヤモヤした。

こんなところにいられない。夕陽は踵を返し、自室へと戻ろうとした。

ガダッ…足が、下に置かれた物にぶつかった。

もぅ、最悪だ。

夕陽はそれでも、痛い足を何とか進め自室入った。

そしてガチャリと鍵をかけた。
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