イケメン兄の甘い毒にやられてます
ベッドに倒れこんで、枕に顔を埋める。

何でこんなに、モヤモヤするの?

何でこんなに、イライラするの?

こんな自分嫌いだ。


…トントン。

夕陽の部屋をノックする音。

誰が叩いたのか直ぐにわかった。でも、返事はしなかった。

「…夕陽、もう寝たのか?」

寝てなんかない。ハッキリ起きてる。

「…夕陽、起きてるんだろ?少しだけ、顔を見せて」

今は、圭吾の顔を見たくない。

夕陽はやっぱり返事はしなかった。

「…夕陽」

最後の問いかけにも夕陽は返事をしなかった。

…その夜、夕陽は眠れなかった。

次の日の朝、ハッキリしない頭を働かせようと背伸びして、ドアを開けた。

「…っ?!」

ドアの横に、圭吾が座ったまま眠っていて、夕陽は驚いた。

しゃがみこんで、圭吾の寝顔を盗み見る。

なんでこんなところで寝てるのか?

夕陽は人差し指で圭吾の頬をつついた。

…その手をガシッと、掴まれた。そしてそのまま、圭吾の腕の中に引き寄せられた。

「…起きてたの?!」
「…寝てたよ、でも、夕陽が頬をつついたから、起きた」

「…」
「…夕陽、なんで、昨晩は起きてるのに、寝たフリしたの?」
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