イケメン兄の甘い毒にやられてます
…仕事から帰って来た圭吾は、玄関の鍵が開けっ放しなのに驚いてドアをバッと開けた。

玄関の灯りも明々と点いている。

「…夕陽?!」

夕陽の名を呼びながら、中へと足を進める。

リビング、ダイニング、キッチンの明かりは消えていた。

圭吾は夕陽の部屋を開けたが、もぬけの殻。

自分の寝室かとドアを開けるが、ベッドの上の布団はめくれたままで、夕陽の姿は何処にもない。

焦る心を落ち着かせつつ、携帯を取り出しかけてみるも、夕陽の部屋から、着信音が聞こえてきた。

「…夕陽、何処にいった?」

携帯を握りしめたまま、玄関に向かう。

只今の時刻、午前0時を回っている。

圭吾が玄関のドアにてをかけたときだった。

携帯が鳴り、慌ててそれに出た。

「…もしもし夕陽?!」
『…凄い慌てようだな、圭吾』

「…相良?!」
『…夕陽ちゃんなら、隣の部屋にいるよ』

「…夕陽に何をした?!夕陽を返せ」
『…返してほしければ、妹と結婚しろ。約束するなら今すぐ返してやる』

「…」

明の父は、内科の教授。ずっと、娘と圭吾を結婚させたがっていた。

『…この結婚は、圭吾にとっても、悪い話じゃないだろ?将来教授の椅子が約束されるんだから』

「…断る」
『…何?』

「…教授の椅子に興味はない。俺は、医者をできれば、それでいい」

『…夕陽ちゃんが、どうなってもいいと?それに圭吾も、この病院で働けなくなるぞ』

「…一ついいか?お前のやってることは、犯罪だぞ?誘拐、恐喝、今から警察に連絡しようか?知り合いがいるんだ」

『…』

「…どうせ、相良の家にいるんだろ?迎えにいくから、今すぐ返せ、いいな?」

…携帯をきると、圭吾は直ぐさま明の家に向かった。
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