イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…神藤先生」
「…相良先生…」

…病室に夕陽を運んだのは明だと聞いていた圭吾。

礼を言わないわけにはいかなかった。

「…相良先生、夕陽を運んでくださったんですね、看護師に聞きました。ありがとうございました」

「…いいえ…大したことなくて良かったですよ」

それだけの会話を交わし、二人はすれ違う。

「…あぁ、神藤先生」
「…何ですか?」

「…夕陽ちゃんとは、仲直り出来たんですか?」
「…えぇ、それが?」

「…夕陽ちゃんに…キスしたことは謝りませんよ」

明の言葉に、怒りがこみ上げる。

「…夕陽ちゃんは純真無垢だ、その辺の女たちとは訳が違う」

「…何が仰りたいんですか?」

「…神藤先生には、私の妹がお似合いだ。将来のためにも。ですから、夕陽ちゃんは、私が引き受けましょう」

「…何の冗談ですか?」

「…冗談?…本気ですよ。夕陽ちゃんが必要なのは神藤先生、貴方じゃない。この私です」

「…相良先生!」

圭吾の言葉を無視して、明は行ってしまった。

…どうやら、明は本気で夕陽の事を奪うつもりらしい。

圭吾は、何がなんでも、夕陽を手放すつもりはなかった。

それ程までに、大事な存在になったのだ。

…明が夕陽にこれ以上近づかないように、圭吾は今後の事を考えていた。

…その頃夕陽は、再び深い眠りに落ちていた。

そんな中、夢を見た。

圭吾と二人で幸せな時間を過ごしていた。

本当に幸せで、夢なら覚めてほしくないと思うほどに…
< 70 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop