イケメン兄の甘い毒にやられてます
ドアの音で目を覚ました。

「…ん、あ、夕陽ちゃん起きて大丈夫?!」

起きるなり、少し焦ったように夕陽に問う明。

夕陽のおでこに自分の手を当てた…が、後ろから、冷たい視線があることに気づき、手はそのままに、目線をそちらに向ける。

「…相良、人の家で何をやってる?」
「…お前がいないから、様子を見に来たんだよ。来て良かったけどな」

明の言葉に、眉をひそめる圭吾。

「…玄関先で高熱で倒れたんだよ。驚いたよ。家には本当に誰もいないし、ずっと看病してたんだけど」

明の言葉に、夕陽も圭吾も驚きを隠せない。

「…礼を言われることがあっても、怒られる筋合いはないと思うけど?」

「…相良さん、ありがとうございました」

夕陽は困惑しつつ、礼を言う。

「…相良、すまなかった。助かったよ」

圭吾も、不本意ながら、礼を言った。

「…圭吾も帰ってきたことだし、帰るよ」

そう言って立ち上がる明を夕陽も見送ろうとした。

「…こら、病人は寝てなさい。圭吾、こんな時は俺に言え。夜勤くらい代わってやるから」

そう言うと、明は帰っていった。

思いがけないハプニングに見回れた明だったが、一晩中、夕陽と過ごすことができて、尚且つ、夢うつつに甘えられたことが嬉しくもあった。

「…やっぱり、夕陽ちゃん好きだな」

そう再確認した一晩だった。

…部屋に取り残された形になった圭吾夕陽。

不可抗力とはいえ、一晩中明と過ごしてしまった夕陽はいたたまれない。

そんな夕陽に、無言で近寄ってきた圭吾。

夕陽は怒られるのを覚悟した。
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