イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…大丈夫?」

しりもちをついた夕陽に相手が手を差し伸べた。

「…ありがとうございま…相良先生」
「…夕陽ちゃん?どうしたの?泣いてるの?」

ぶつかった相手は、明だった。

明の問いに、夕陽は作り笑いを浮かべ、首をふる。

「…でも、目が真っ赤だよ」
「…ぇ…ぁ、そう、ゴミが入って痛くて」

「…原因は圭吾?」
「何言ってるんですか?だから、ゴミが」

そこまで言ってみたものの、それ以上言葉がでなくなる。

なぜなら、明が無言で夕陽を見据えていたから。

「…どうしたの?俺には話せないこと?原因の本人はどこ?」

「…」

黙りこんだ夕陽は俯いた。

そんな夕陽の頭を、ポンポンと優しく撫でる明。

「…圭吾は病院の中にいるの?」

明の言葉に、素直に頷く。

明はしゃがみこむと、夕陽の片手を握り、夕陽を見上げる。

まるで、小さな子供を相手してるかのよう。

「…夕陽ちゃん」
「…圭吾さんは」

「…ん?」
「…美人なお姉さんと結婚するんですか?」

夕陽の言葉に、目を見開く明。

驚くと同時に、夕陽の今の状態の原因に納得する。

「…美人なお姉さんね…あれ、俺の妹」

今度は夕陽が目を見開く。

明は困ったような笑みを浮かべ、話を続ける。

「…夕陽ちゃんに出会う前から、俺の親父、内科の教授なんだけど、圭吾に、妹と結婚するよう、再三言ってきてたんだよ。妹も圭吾が好きだから、熱烈にアピールし続けてるしね」

「…教授の娘さんなんですね…とってもきれいで」

「…俺は、妹だから、きれいかどうかなんて考えたことないけど…まぁ、妹と結婚したら、将来は約束されるよね」

その言葉に、夕陽が明の手を握りしめた。
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