イケメン兄の甘い毒にやられてます
教授室の掃除を終えた夕陽は、ゴミ袋を持って、ごみ置き場に向かって歩いていた。

「…う!」
「…?」

誰かの声がしたような?

夕陽は思ったが、気のせいかと歩き出す。

「…夕陽」
「…?!」

今度はハッキリとした声が聞こえてきて、振り返ると、圭吾がいて、夕陽は慌てて走り出した。

藍から、絶対圭吾には会うなと釘を刺されていたのだ。もし、会ったりしたら、直ぐにでも結婚すると脅されていた為、夕陽は圭吾から逃げ出したのだ。

「…夕陽!まって!」
「…無理!」

走って追いかけてくる圭吾から、何とか逃げようと必死に走る夕陽は、エレベーターではなく、階段を選んだ。

エレベーターなんて、待っていられない。

「…っ?ひゃぁ!」

ゴミ袋で前が見えにくく、段を踏み外してしまった夕陽は、下へとまっ逆さま。

何とか追い付いた圭吾が落ちる夕陽の手を掴んだが、勢いに負け、二人で落ちた。

「…ッテテ…大丈夫か、夕陽?」

夕陽の体を包み込んでいた圭吾が夕陽に問う。

「…なんで」

あー、何てことだろう。圭吾と会ってしまった。痛みなんてどうでもよくて、圭吾が藍と結婚してしまうと思うと、夕陽は大泣きし出した。
< 90 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop