イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…夕陽?どうして泣くんだよ?どっか打ったのか?ケガしたのか?」

夕陽の体をあちこち確認しながら圭吾が言う。

夕陽は泣きながら、ふるふると首をふる。

「…どうして追いかけてきたんですか?どうして捕まえちゃうんですかぁ」

わんわん泣きながら、何とか言葉を発する。

「…夕陽に会いたかったからに決まってるだろ?冷たい態度をとったから謝りたかった。こうやって、抱き締めたかった」

圭吾は夕陽を、ぎゅうっと抱きしめる。

でも、夕陽はもがいて離れようとする。

「…こんなことしないでください!私は圭吾さんと会っちゃいけないんです!会ったりなんかしたら、圭吾さん、結婚しちゃうでしょう?」

もう、後は声にならなくて、とにかく泣かずにいられない。

泣く泣く大好きな圭吾から離れて、頑張ってると言うのに、何もかもが水の泡だ。

「…しないよ」
「…ふぇ?」

「…いや、結婚はする」
「…ヤーダー」

「…夕陽と、結婚する」
「…」

今なんて?

涙は止まらないが、拭う手が止まった。

「…俺は、夕陽と、結婚する。藍さんとは結婚しないよ」
「…う、そ…うそだぁ」

「…あーあー、泣きすぎたよ、夕陽」

困ったような笑みを浮かべながら、圭吾は夕陽の顔をごしごしと拭う。

「…会っちゃったのに?結婚しないの?」
「…藍さんと結婚してほしいの?」

「…やだ!絶対やだ!」

泣き叫んだ夕陽を落ち着かせるように、圭吾は夕陽をもう一度優しく抱きしめた。

「…俺には夕陽しかいない。帰っておいで。夕陽」
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