イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…ずっと色んなことでバタバタしてたし、夢の事はそっちのけになってたなって、信夫さんと話してて気づいて…」

夕陽の言葉に、圭吾は眉をピクリと動かした。

「…信夫さん、ね」
「…信夫さん、とってもいい寮父さんなんですよ」

そう言って、嬉しそうに微笑んだ夕陽。

それとはうって変わって、ちょっと不機嫌な圭吾の顔。

「…圭吾、さん?」
「…夕陽の夢は、もちろん、いいものだし、応援するよ」

「…ほんとですか?!」
「…うん、寮生活も、規則なんだから仕方ないよね、卒業まで、後一年半だし…すぐたよ」

「…はい、週末には、自宅へ帰るようにします」
「…うん、でも、ひとつだけ」

「…?」

両手で、夕陽の顔を包み込んだ圭吾は、真っ直ぐに夕陽を見つめる。

「…信夫さんには、気をつけて」
「…え???」

「…信夫さん、凄く若いよね?夕陽が、信夫さんに奪われないか、それだけが心配」

「…」

圭吾の言葉に、夕陽はキョトンとする。

「…信夫さん、夕陽に気があるだろ?」
「…え???は??いや、それはな「…ある!絶対」

ないと、言おうとしたのに、圭吾がその言葉を遮った。

「…夕陽は俺の大事な大事な人だから、俺には夕陽しかいないから、だから、お願いだから、気をつけて」

「…圭吾さん、」
「…夕陽が大好きで、本当は寮生活なんて、させたくないのに…」

「…圭吾さん、」
「…ん?」





「…圭吾さん、信夫さんのこと、勘違いし過ぎです…無理もないけど。私も間違えたし…






信夫さん、今年で58歳ですよ?


可愛い奥さんときれいな娘さんがいます。


私たち、寮生が、自分の子供みたいに見えて、可愛いって言ってましたよ?」





圭吾は自分の耳を疑った。
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