black×cherry ☆番外編追加しました
「ここだよな」

「はい」

羽鳥家自宅の正門前。

表札にかかる少し手前で、黒崎さんは車を止めた。

するとその時、レンガの外壁にある門灯が明るく光った。

待っていたかのようなタイミング。なんだかドキリとしてしまう。

助手席から窓の外を見てみると、庭の石畳が敷かれた道を、険しい顔のママがこちらに向かって歩いてきていた。


(ママ、怒ってる・・・?)


まだ、約束の20時になっていないけど、ママは怒ったような顔をしている。

なんとなく、不安がよぎった。

「あの、すみません、今日は、どうもありがとうございました」
 
早く車を降りなくちゃ。

咄嗟にそう思った私は、黒崎さんにお礼を言うと、素早く車を飛び出した。

門が開いて私を見るなり、ママは怒ったような声で言う。

「咲良・・・心配したわよ」

「ママ・・・」

「電話は出ないし、一時間前にメールを送ったんだけど。見てない?」

「えっ?あ・・・ごめんなさい。気づかなくて・・・」

スマホは持っているけれど、私は基本、あまり画面を見ない方。

かばんにしまったままでいると、メールや電話に気づかないことも多かった。

「ママもね、昭一兄さんからのメールに気づくのが遅かったから・・・咲良のことは責められないけど。

驚いたわ・・・。佐和子さんも兄さんも仕事が入って、知らない男の人に送ってもらう、なんてメールに書いてあったから」

心配そうに、ママは眉間にシワを寄せた。

私は慌てて否定する。

「知らないわけじゃないよ。私も面識があって・・・。おじさまの部下で警察のひとだよ」

「警察官でも。男の人には変わりはないでしょ?知らないっていうのは、ママが知らないっていう意味。早川先生と婚約前なんだから・・・。おばあさまに知られたら、きっととても怒るわよ」

「・・・うん」

「なにもされてない?」

「!?さ、されてないよ・・・!」
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