black×cherry ☆番外編追加しました
言い合いをしていると、黒崎さんが運転席から下りて来た。

私が責められている気配を感じ、心配してくれたようだった。

「初めまして。黒崎と申します。本部長にはいつもお世話になってます」

「ああ、いえ・・・こちらこそ」

「お嬢さんは、20時までに送り届けるようにと本部長に頼まれていて。間に合ったと思うのですが、連絡に行き違いでもありましたか」

「いえ・・・すみません、失礼します」

そう言うと、ママは私の背中を押して、黒崎さんから引き離すように門の中へと押し込んだ。

そして送ってくれたお礼も告げず、門をガシャリと閉めてしまった。

「ちょっ・・・ママ!黒崎さん、家まで送ってくれたんだよ?」

「いいから。おばあさまに見つからないうちに、早く家に入りなさい」

そう言うと、私の手を引っ張って、庭の石畳の上を足早に突っ切って行く。

一瞬だけ後ろを振り返ってはみたけれど、高い外壁が邪魔をして、黒崎さんがいるかどうかはわからなかった。


(黒崎さん・・・どうしよう、こんな別れ方をして)


お世話になったのに、ひどい態度で去ってしまった。

胸がざわざわと痛くなる。

けれど私は、母の手を振りほどき、黒崎さんに謝りに行くことはできなかった。




「よかったわ・・・。おばあさまに見つからなくて・・・」

玄関の中に入った途端、ママは崩れるようにしゃがみ込む。

相当心配かけたのだろう。

顔色からも、疲れた様子が見て取れた。

「もう・・・本当に心配したわ。なにかあったらって思って・・・。今日みたいなときは、必ず家に連絡しなさい。兄さんもなにを考えてるのか・・・。男の人と二人だなんて、なにかあったらどうしてくれるの・・・」

「・・・ごめんなさい・・・」
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