black×cherry ☆番外編追加しました
以前と同じ、海沿いの遊歩道。

来たのはつい先週のこと。

季節は変わっていないのに、見える景色が違って見える。

じりじりと、照りつける日差しが痛い。

日傘は忘れてしまったけれど、いつもより、日焼け止めをたっぷり塗ってきてよかったと思う。




釣り桟橋の手前に来ると、私は一度足を止め、大きく深呼吸をする。


(いるかな・・・)


いざとなると緊張する。けれどやっぱりいてほしい。




釣り桟橋には、今日もたくさんの人がいた。

先週よりも多いだろうか。

ぱっと見渡した限りでは、黒崎さんがいるかどうかはわからない。

先週は釣り桟橋の先端辺りにいたけれど、また同じ場所にいるとは限らないので、釣り人たちの後ろ姿を一人一人確認していく。


(そもそも、今日来ているのかもわからないけど・・・)


なぜか会えるような気がした。

そして、会えるようにと願いながら、一歩一歩進んで行った。


(・・・あっ・・・!)


先端にほど近い、釣り桟橋の片隅で、ひときわ大きな背中を見つけた。

黒崎さんだ。

私は、痛いほどうるさくなった胸の鼓動を感じながら、ゆっくりと、その大きな背中に近づいた。

「く・・・黒崎さん!」

勇気を出して声を出す。

信じられないほど大きく裏返った声に、周囲の人が振り向いた。

そしてもちろん、名前を呼ばれた黒崎さんは、何事だ、といった様子で私のことを振り返る。

「・・・なにしてんだ・・・」

目を見開いて驚いていた。

低い声が、いつも以上に低音に聞こえるようだった。

持っていた竿を地面に置いて、黒崎さんは私をジロリと見下ろした。
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