black×cherry ☆番外編追加しました
「こんなとこ・・・何しに来たんだ」

されて当然の質問だった。

凄みのある怒った顔に、怯えながらも勇気を出して説明をする。

「あの、昨日・・・送っていただいたのに失礼な態度をとってしまって・・・。謝りたくて、ここに来たら会えるかなって考えて・・・」

「・・・は?」

黒崎さんは、呆気にとられた顔をした。

けれどすぐ、いつもの強面顔に変化した。

「・・・それでわざわざ。ずいぶんご苦労だな」

「い、いえ・・・」

「母親のことだろ?別に気にしなくていい。本部長が連絡入れてたみたいだけど、いい顔しない覚悟はしてたし。それに、ああいう感じはわりと慣れてる」

「・・・慣れてる・・・」

「ああ。仕事でも警戒されるし。悪人面だからああいう態度は慣れてるよ。気にすんな」

「・・・」


(そう、なんだ・・・)


なんだか、それは嫌だと思った。

私だって、黒崎さんはもちろん怖い。

怖いけど、怖いと思って避けていたけど、無条件に警戒されてしまうのは、なんだかとても嫌だった。


(優しいところもあるのにな・・・)


なんて、怖がっているのに優しいって、私の感情は滅茶苦茶だ。

けれど、「怖そうだ」って何も知らずに警戒するのは、「誤解だよ」って言いたくなった。

今までの自分のことは、思いきり棚に上げてしまうけど・・・。

「・・・で?今日も一人じゃないだろ。またあの伯母と来てるのか」

「あ・・・いえ。うちの運転手さんです。今は、近くの喫茶店で待ってくれています」

「・・・へえ・・・」

軽く相槌を打った後、考えるようなしばしの沈黙。

次の言葉はなんだろう、とちょっと不安になってくる。
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