black×cherry ☆番外編追加しました
はっと、直感のままに目線を上げた。

すると私は、驚きと恐怖で目を見開いて息をのむ。

「咲良・・・」

名前を呼ばれ、心臓が本気で止まりそうだった。

私を見つめて、大きな瞳が弧を描く。
 
あの時よりも痩せた頬。

強い力のあった目が、以前と違う光を放った。

「やっと、会えた・・・」

目の前に立っていたのは、私が以前好きだった、ホストの・・・貴見悠翔さんだった。

なぜ、ここに、悠翔さんが。

あれからずっと、私は忘れるように何度も努力をしてたのにーーーーー。

「会いたかったよ・・・。いつ一人になるかって、ずっとずっと待っていたんだ」

「!」

じり、じり、と、悠翔さんが私の方へ近づいてくる。

痩せた、というよりやつれただろうか。

ギョロリとした目は、以前より一層大きくなった気がする。

いつも形よく整えられていた髪の毛は、中途半端に伸びていて、妖艶に着こなしていた細身のスーツも、今はくたびれた印象だった。

「あ、あの・・・」

「咲良、連絡先変えただろ・・・。誰に聞いても知らないって言われるし。だからずっと、ここで咲良が一人になるのを待ってたんだよ」

「!?」

私ははっと記憶を辿る。


(『ずっと』って、『ここで』って・・・まさか、この前、黒崎さんたちが言っていた不審者って・・・)


考えて、身体がガタガタ震え出す。

背中に嫌な汗が流れた。

悠翔さんは、私をずっと待っていた。

ここで、私が一人になるのをーーーーー。

「わ、私・・・っ」

「言い訳さえもさせてくれない。どれだけ、オレが傷ついたのかわかってる?」

逃げたいのに、身体が全く動かない。
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