black×cherry ☆番外編追加しました
岡本さんは、私の元に駆け寄って、背中を支えて上半身を起こしてくれた。

「大丈夫!?咲良ちゃん」

見慣れた優しい顔と声。

安心感に包まれて、涙がたまらず溢れ出る。

「す、すみませ・・・」

「うん、大丈夫だよ、大丈夫。もう大丈夫だから。あ、えっと・・・ハンカチ、ハンカチ・・・」

焦った様子で、岡本さんは全身のポケットの位置を探りだす。

そして「あった!」と青いハンドタオルを取り出すと、頬の涙を拭ってくれた。

「ごめんね、なんかしわくちゃなタオルで・・・」

「いえ、ありがと・・・ございます・・・」

確かにしわくちゃだったけど、その感触は、柔らかくて優しくて、岡本さんのようだと思った。


(よかった・・・)


ただ、ただそれだけだった。

ここに、岡本さんと黒崎さんが来てくれたこと。

悠翔さんにあれ以上触れられず、捕らわれずに済んだこと。そのことに、心の底から安堵した。

そんな泣きじゃくる私の背中を、岡本さんは「大丈夫」だと言いながら、何度も優しくさすってくれた。

「岡本」

しばらく経つと、黒崎さんの声がした。

見ると、黒崎さんの腕の中で、いつの間にか悠翔さんがぐったりとうなだれていた。

「市谷さんの車来たから。先にコイツ連れていけ」

「あ、はい!了解です。あ・・・っと、そうしたら咲良ちゃんは・・・」

「・・・オレが連れてく」


(!)


その言葉に、私の胸がドキリと鳴った。

深い意味なんて、これっぽっちもないかもしれない。

だけど、「オレが」と言われたことに、どうしようもないほど私の胸はドキドキと音を出していた。
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