black×cherry ☆番外編追加しました
私は今日、すごく、すごく怖かった。

悠翔さんに会った時。

うすら笑いを浮かべられた時。

顔に、唇に触れられたことも・・・全部全部、怖かった。


(小さいけれど、ケガだってしたんだよ・・・)


それなのに、私の心配はしていなかった?

おばあさまに見つからないようにって、それだけを心配していた・・・?

また、涙がこみ上げた。

今日何度目の涙だろうか。

けれど私は、流れそうになる涙をぎゅっとこらえてママを見た。

「・・・あの、ママ」

「なに?」

「私・・・明日の食事会、欠席したい・・・」

突然私が発した言葉に、ママは「は!?」と言ってとても驚いた顔をした。

「どうしたの?急になにを言い出すの」

「手をケガして、痛いんだ。足も・・・コンサートが終わったら、そのまま家に帰りたい」

わがままだった。

ママへの怒りや悲しさを、私は、こんなことでしか表現できない。

本当に、私は、こんな年をしてやっぱり子どもなのかもしれない。

「何言ってるの!ダメよ、それぐらいは頑張りなさい」

ママの顔は怖かった。

怒りと、焦り、そんな感情が伝わってくる。

「咲良。あなた最近、本当にわがままが過ぎるわよ。明日を逃したら、今度ご両親にいつ会えるかはわからないのよ?」

「でも・・・もともと、私は行きたくないって伝えたよ」

「・・・っ、咲良っ!」

ママの叱責のような声が飛ぶ。

ビクリと身体を震わせた時、ちょうど玄関のドアがガチャリと開いた。

見ると、とても久しぶりに会う、パパが驚いた顔で立っていた。
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