black×cherry ☆番外編追加しました
「・・・ただいま。どうした。桃子の怒った声が聞こえたけれど」

私とママと交互に見やり、パパが困惑顔で問いかける。

ママはすかさず、パパに事情を話し出す。

「咲良、明日の食事会に行きたくないと言い出して・・・。ちょっと、いろいろあってね・・・手をケガしているみたいだけれど。それが痛むからって言って・・・それだけで、行きたくないって急に言うから困っていたの」

「ちょっとって?なにかあったのか」

「・・・ううん。大したことではないんだけど・・・」

言いにくそうに、ママはそう言葉を濁した。

あんなことがあったのに。パパに、今日のことを伝えるつもりはないらしい。

そして、この状況を見た私が、自分からパパに言えないことも、ママは多分わかっている。

「・・・どれ。ちょっと見せて」

パパは、私の両掌を手で持った。

そしてじっくりと見てから私の頭を撫でて言う。

「痛そうだな。大丈夫か?」

「うん・・・。バイオリンは出来ると思う。だけど、動かすとやっぱり痛くて」

「そうか・・・。うん、無理はしなくていい。明日は和食だったかな。箸を持ったり皿を持ったり・・・コンサートの後でつらいだろ。わかった。明日はパパから断っておく」


(!)


「ちょっ・・・、あなた、なに言ってるの!」

「俺から話しておくから。大丈夫だよ。早川くんも、ご両親もいい方だ。ケガしてるのに無理しているとわかったら、そっちの方が心を痛める」

「でも・・・」

「母さんのこと?大丈夫だよ。今回は俺から言っておく。母さんだって、咲良がケガしてるって知ったら同じことを言うに決まってるよ」

「・・・そうかしら・・・」
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