black×cherry ☆番外編追加しました
(えっと・・・ええと・・・。あっ・・・!そうだ・・・!)


「あの、私、黒崎さんに連絡先を渡したいと思っていて・・・」

言いながら、私ははっとする。

「渡したいから」と言ったところで、黒崎さんは「いらない」って言うかもしれない。

しかも今は、コンサート後のドレス姿だ。

先ほどもらった花束を胸に抱えているだけで、連絡先を書いたカードは、楽屋にあるカバンの中に入れたまま。


(・・・ばか)


「すみません・・・渡したくてカードを用意してたんですが、今は持っていませんでした・・・」

言い訳のような、わけのわからないことを言ってしまった。

今から楽屋に取りに行くって、ここで待っていてもらうわけにもいかない。

もちろん、「いらない」って言われてしまったら、それで終わりなのだけど・・・。


(ほんとに、ばか・・・)


気まずいような沈黙が流れる。

どうしようかとうつむく私に、黒崎さんが問いかけた。

「・・・連絡先って、携帯か」

「はい・・・」

「・・・・・・じゃあ、オレの名刺渡しとくから」


(・・・え?)


その言葉に、私は驚き、はっとするように顔を上げた。

すると目の前に、名刺が一枚差し出された。

「メールなら、別に、いつでも」


(!)


「あ、ありがとうございます・・・!」

嬉しかった。

黒崎さんは、どういう気持ちで渡してくれているのだろうか。

驚きと嬉しさで、頭がパンクしてしまいそう。

ドキドキと、右手を出して名刺を受け取った瞬間に、「咲良ちゃん」と名前を呼ばれ、私は後ろを振り返る。
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