black×cherry ☆番外編追加しました
二学期も始まり、日常が戻った9月の終わり。

全てが何も変わらずに、ただ、時間だけが過ぎる日々。

黒崎さんからメールはないまま。

早川先生とも、あれから会っていないまま。

何も変わらず、全てのことが平行線。

けれど、婚約のことだけは、ひっそりと話が進んでいるような感じもしていた。




そんなある日。

午前中だけの講義を終えて、家に帰ると、忙しそうに動くママに用事を頼まれた。

「このお弁当をパパに?」

「うん。ママはご近所に配ってこないといけないからね。咲良は病院に持って行って」

リビングテーブルにずらりと置かれた、20個ものお弁当。

これは、町内会の会合のため、おばあさまが高級料亭に発注していた特製弁当なのだそう。

けれど、おばあさまが日にちを間違えて伝えたのか、料亭側が間違えたのか、そこははっきりしないけど、とにかく、来週の日にちを間違って今日届いたらしい。

日頃から懇意にしているお店だし、丁寧な謝罪があったそうなので、おばあさまは「まあいいわ」と代金はそのまま支払って、お弁当を受け取ることにしたそうだ。

とはいえ、20個ものお弁当。

私たちだけで食べきれるはずはなく、ご近所に配り、パパの病院にも持って行くことにしたようだ。


(ちょっとめんどうだけど・・・。仕事中のパパに会えるのは久しぶりだもんね)


いつ以来だったかな。

子どもの頃に、病院の庭に遊びに行った記憶はあった。

けれど、パパが病院長になってからは、今日が初めてだと思う。

「うん・・・わかった。じゃあ、風呂敷に包んで持っていくね」

「ああ、二つお願い。早川先生にも持って行ってあげてほしいの」

「えっ・・・」
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