black×cherry ☆番外編追加しました
そこで身体が固まった。

パパだけじゃなく、早川先生にも持って行かなきゃいけないの・・・?

「連絡したら、先生も忙しくてお昼まだだそうなのよ。咲良が持って行くって言ったら、待ってるって言ってたわ」

「・・・」


(早川先生に・・・)


急に、行きたくないと思ってしまった。

先生に、お昼ご飯をわざわざ届けに行くなんて。

それこそまるで・・・婚約者や奥さんみたいだ。

「ちゃんと届けてよ?お弁当、楽しみに待ってくれてるの。忙しくて買いに行く時間もないみたいだし。食べられなくて早川先生が倒れたら、患者さんにも迷惑よ」

「・・・・・・うん」


(行きたくないけど・・・)


そこまで言われて、断ることができなかった。

気が進まないことだけど、すでに約束してること。

忙しさや、先生の身体や患者さんのことを思うと、院長の娘としても、行かなければいけない気持ちになった。

「わかった・・・。じゃあ、パパと、先生の分持って行くね」

「うん。お願い。喜ぶわよ、早川先生」

「・・・」

今日だけだ。

いろんな不安があるけれど、なるべく、目立たないように届けに行こう。

先生は忙しいから、渡したらすぐに帰ってしまおう。


(そうだ・・・ただのママのおつかいだもの)


大丈夫、と何度も自分に言い聞かせ、私は、お弁当を包んだ風呂敷を手に、馬場さんの車に乗り込んだ。











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