black×cherry ☆番外編追加しました
「はい。患者さんもお待ちですし、父にも持って行かないといけないので・・・」

「・・・ああ。そっか。羽鳥先生も待ってるね。じゃあ・・・また今度。今度こそ、二人でゆっくり食事に行こう」

「後で予定教えて」と言って、先生は私に小さな紙を手渡した。

手書きで書かれた、電話番号とメールアドレス。

黒崎さんに連絡先をもらった時と似たような状況だけど、今は、ときめくよりも胸の痛みが止まらない。

「・・・あの、私」

「とりあえず連絡して。ごめん、患者さん呼んじゃうから。またね」

急かすようにそう言われ、看護師さんにも外に出るよう言われてしまった。


(・・・困ったな)


受け取ってしまった連絡先。

これはやっぱり・・・連絡しないといけないのかな・・・。

「院長先生のお嬢さん、早川先生と付き合ってるの?」

診察室を出て受付の位置まで来ると、さきほどの受付女性が私に話しかけてきた。

ママよりも、少し上の年代だろうか。

にこにこと尋ねる様子は、自分の子を見守るような印象だった。

「いえ・・・。違います。お弁当は、母から頼まれて持ってきたんです」

「あら、そうなんですか?ちょっとそんな噂も聞いたりしてね。美男美女だし、お似合いだなって思っていたんですけどね。いいですよ〜、先生優しいし!事務の間でも大人気!」

「・・・そうなんですか」

また、胸が痛んでしまった。

私はこんな気持ちでいるのに、先生は私を好きだと言ってくれている。

優しくて、完璧な人。そんな人と、結婚したくないなんて。

「でも、先生はその気っぽいですね。お嬢さんさえその気になれば、すぐですよ!」

「え?あ・・・は、はあ・・・」
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