black×cherry ☆番外編追加しました
「中にいたりして」と冗談を言いながら、のれんをくぐってお店に入る。

私は、「今日はそれはないように」って、心の中で願ったけれど。




店内は、見覚えのある内装だった。

キッチンの様子。カウンターの色。店員さんの着ているTシャツ。

ここのお店に間違いない。

「やっぱり、ここです」

「あ、ほんと?黒崎さんは・・・さすがにいないか」

店内をぐるっと見渡した岡本さんは、そう言って笑った。

店は混雑していたけれど、ちょうど4人のお客さんが出て行ったので、入れ替わりですぐに座ることができた。

私が座ったのは、以前、黒崎さんと来た時に座った席と同じ席。

すぐ左が壁という、カウンターの一番端の席だった。

「何にする?咲良ちゃんは前はなにを食べたのかな」

「あ・・・えっと、黒崎さんにおまかせして・・・多分、濃厚豚骨です」

真面目な顔で伝えると、岡本さんは「ぶぶっ」と笑った。

「濃厚豚骨!咲良ちゃんからそんな単語が出てくるとは」

「で、出ますよ、濃厚豚骨くらい」

「そう?・・・そっか。そうだよね。じゃあ、それでいい?」

「はい」

千穂ちゃんが、「私も」と言って、岡本さんが三人分の濃厚豚骨ラーメンを注文してくれた。

その間、千穂ちゃんは「蒼佑さん、本気で咲良を天使かなにかと勘違いしてるんだよ」と私に耳打ちをして笑っていた。

「・・・はい、おまちどおさまでーす!」

三人でたわいない会話をしていると、高校生くらいの女の子が、ラーメンを順に運んでくれた。

前は男の子だったかな。そんなことを思い出す。

「じゃあ、食べて食べて。今日はオレのおごりだよー」
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