black×cherry ☆番外編追加しました
(えっ)


「そんな、急に」

「急にって、前から言ってることでしょう。それに、そうでもしないと咲良はちゃんとしないもの。ちょうどその日、先生のご両親も予定がないそうなのよ。だから、みんなでお食事をしましょうっていう話になって」

「え、ま、待って」

「もうね、その時に婚約してしまおうと思っているの。おじいさまとおばあさまはその日は来れないそうなんだけど・・・話したら、早い方がいいからって、そうしなさいって喜んでくださったわ」

「ちょ、ちょっと・・・ちょっと待って・・・!」

たまらず声を上げていた。

そんなの・・・そんなの困る・・・!

「ママ、私、好きな人がいるって言ったよ」

「まだ言ってるの。そんなこと・・・それこそ忘れなさいって言ったでしょう」

「・・・やっぱり、無理なの・・・」

私だって、忘れられるものなら忘れたい。

そうした方がいいってことも、もちろんわかっているけれど・・・。


(やっぱり・・・無理なの)


帰り際、つかまれた右手がまだ熱い。

今のままでいいんだって、言ってくれた言葉の意味が、よくわからずに混乱していて、気持ちが引き戻されていく。

「ママだって、パパと恋愛結婚だったでしょう?私の気持ち、わかってほしい・・・」
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