black×cherry ☆番外編追加しました
「ラーメン屋さん・・・」

思わず声を出していた。

すると早川先生は、聞き違いかと言うように、「えっ?」と笑った。

「ラーメン?咲良ちゃんラーメン好きなの?」

「は、はい」

「そうなんだ。でも、咲良ちゃん連れてラーメン屋は行けないなあ。・・・ああ、じゃあ、中華にしようか。すごく美味しいところがあって」

先生は、有名ホテルの中にある、中華料理店の名前を言った。

その高層階にある店は、景色もいいよと話してくれた。


(でも、そうじゃなくて・・・)


有名なところじゃなくていい。

景色もよくなくたっていい。

ただ、私は黒崎さんとーーーーー・・・。


(あっ・・・)


私はそこで気づいてしまった。

あのラーメン屋さんは、おいしくてとても気に入った。

だけど、きっと、それよりも。

どこかじゃなくて、私はーーーーー黒崎さんと、行きたいんだ。

「・・・咲良ちゃん?」

黙り込んでしまった私に、早川先生は不思議そうに声をかけてきた。

私ははっと我に返って、慌てて感情を取り繕った。

「すみません、ぼおっとして」

「いや、いいよ。疲れてるんだね。かしこまった席で、着物だし」

「はい・・・」

「このことはまた、今度ゆっくり決めようか。ああ、そうだ。今度こそ連絡してね」

先生は、甘い顔で微笑んだ。

・・・そうだ、今度こそ。

黒崎さんを思い出さない。

私はもう、先生の婚約者になったのだからーーー・・・。
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