black×cherry ☆番外編追加しました
すると「そう・・・」と小さな声で呟いて、ママは今度は、私を横から抱きしめた。

「咲良には、すごく大事な人なのね」

「・・・うん・・・」

「大丈夫。パパはね、『天才外科医』なんだから。咲良の大切な人を、治せないわけないからね」

とても優しい声だった。

そしてとても、力強い声だと思った。

「だから大丈夫よ。大丈夫、大丈夫・・・」

「・・・うん・・・」

涙はまだ止まらない。

さっきより、さらに溢れてしまったような気もした。

それでも私は、ママが触れるぬくもりに、不思議と心が落ち着いてくる。

涙と一緒に、不安な気持ちが流れていったのかもしれない。


(大丈夫・・・)


パパを信じて待っていれば。

早川先生だってついている。


そして・・・黒崎さんなら。


私は祈るように目を閉じて、抱きしめてくれるママの手に、そっと自分の両手を重ねた。














< 266 / 318 >

この作品をシェア

pagetop