black×cherry ☆番外編追加しました
翌日の夜、約束通り昭一おじさまが家に来てくれた。

私とママの顔を見るなり、ほっと安心したようで、ポロポロと涙をこぼしていた。

「よかった、本当に、無事で・・・」

おじさまは、私とママにそう言った。

きっと、すごく心配していたのだと思う。

銀縁眼鏡の目の下は、大きなクマができていた。

そして気持ちを落ち着けた後、事件の経緯を話してくれた。



犯人は、生田統一郎、42歳。

事件の動機は、統一郎氏の奥様・・・真有李(まゆり)さんが、10年前に受けた手術に対する逆恨みのようなものだった。



10年前。

統一郎氏と結婚してまもなくの時、真有李さんは事故にあう。

二人で乗っていた車が玉突き事故に巻き込まれ、かすり傷だけだった統一郎氏に対し、助手席の真有李さんは重傷を負ってしまったのだ。

すぐさま搬送されたのは、当時まだ、おじいさまが院長を務めていた羽白総合病院。

そしてパパが、真有李さんの主治医となって緊急手術を施した。

けれど、一度の手術で済むような状態ではなく、さまざまな先生たちの力も借りて、複数回手術した。

どの先生も最大限の力を尽くし、手術自体の落ち度はなかったそうだけど。

真有李さんはほとんど目を開くこともなく、寝たきりのままになってしまった。

『・・・おまえのせいだ・・・』

統一郎氏は、真有李さんの状態を、主治医であるパパのせいだと責めたてた。
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