black×cherry ☆番外編追加しました
おじさまはまた話を続けた。


脅迫状は、一度きりでその後二度目は来なかった。

その他、パパの周りで不審なことも起こらずに、警察の捜査でも、脅迫状の差出人や、パパに恨みを持つ人物は特定できないままだった。

「で・・・ただのいたずらだったのかって思った矢先だ。生田統一郎から、和馬くんに直接電話があったのは」

それがちょうど、私と早川先生が婚約をする、お食事会の直前だった。

どこで調べたのか、院長室に直接電話をかけてきて、ぼそぼそと聞き取れないほどの小さな声でなにかを言っていたそうだ。

「あの日の朝、真有李さんが亡くなったんだ。それまで、脅迫状を送ったものの、実際なにをしたらいいかわからなかったみたいだけどな。真有李さんが亡くなったことで、なにかがうずいたんだろう。

とにかく、和馬くんになにかしてやりたい、そんな気持ちになったんだろう」

けれど、聞き取れない電話だった。

いたずら電話なのかもしれない。

パパは、私たちとの約束に間に合うように、気持ちがとても焦っていた。

そのため、「大事な用事がある」と言って、慌ただしく電話を切ってしまったそうだ。

「ここでまた、生田は和馬くんに腹を立てたんだな。話も聞かず、一方的に電話を切られたと思った。それで、ネットを駆使して和馬くんの『大事な用事』の行先を調べたんだよ」

有名人ではないけれど、パパのことは、知っている人は知っている。

そしてあの食事会をしたホテルにも、客の中でパパを知っている人がいた。

「若い女の子だ。たまたま和馬くんのことを知っていたみたいでな。本人は軽い気持ちで、ただの呟きだったと思うけど。『羽白総合病院の院長が食事に来てる』って、SNSに書き込んでたんだ」
< 271 / 318 >

この作品をシェア

pagetop