black×cherry ☆番外編追加しました
それを見た統一郎氏は、あのホテルまでやってきた。

ナイフを胸に忍ばせて。

そして、あの事件が起こったーーーーー・・・。


「和馬くんに危害を加えて、その後で自殺しようと考えていたみたいだな。本人なりに、その演出をいろいろと考えていたようだけど。その計画していたシナリオを、黒崎に壊されたんだな」

あの時ーーー統一郎氏は、パパの前で「死んでやる」と、ナイフを自分に向けていた。

けれどあの時点では、死ぬ気なんて全くなくて、ただのポーズにすぎなかった。

ああ言えば、パパは必死になって謝りながら止めるはず。

パパの土下座が見たかったという。

しかし、黒崎さんにナイフを撃ち落とされたため、描いていたシナリオは、そこから大きく変更せざるを得なかった。

「黒崎も無茶なことをする。あそこに岡本もいれば、発砲なんてせず生田を取り押さえられたんだろうが・・・」

悪いタイミングが重なった。

私たちが、和食店を出てロビーに移る間のこと。

岡本さんと黒崎さんは、周囲に気づかれないよう後ろからパパの護衛をしていた。

その時、すれ違った高齢女性が、突然心臓発作で倒れたそうだ。

「ほっとくことはできないからな、岡本が心臓マッサージをして黒崎はすぐ応援を呼んだ。とりあえずホテルの従業員が駆け付けてくれたそうだけど・・・岡本はすぐにその場を離れられる状況じゃなかったらしい。

だからその場は岡本に任せて、和馬くんの護衛には黒崎だけがついてった。その時に限ってだ、ああいう事件が起きたのは」


(そうだったんだ・・・)


「発砲なんて、一歩間違えれば大変なことになっていたんだ。それをあいつは・・・」

おじさまは、大きなため息をついて言葉をのんだ。

本当に、ナイフだけに当たってよかった。

黒崎さんは、間違える不安はなかったのだろうか。

「とにかく・・・咲良たちが無事でよかった。今回の事件は、生田統一郎の真有李さんを思う気持ちが、和馬くんへの憎悪に変わって起きたことだと思う。

最初に事故を起こした人物ではなく、和馬くんへの憎悪に変わった。ここらへんの気持ちの動きは、俺にはよくわからない。もしかしたら、生田自身もわからないのかもしれないな・・・」
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