black×cherry ☆番外編追加しました
黒崎さんの病室は、本棟5階にある外科病棟の特別室。

普通個室の約5倍の広さがあって、大きなテレビやソファセットが置かれているそう。

ちょうど空き部屋だったので、パパが手配したそうだ。



パパが院長の病院とはいえ、病室はもちろん、病棟に入るのも初めてだった。

心細いのは確かだけれど、馬場さんには病院の休憩室で待っていてもらうことにした。


5階に上がり、ナースステーションで受付をすませると、廊下の一番奥にある、特別室へとドキドキしながら進んで行った。

経過はいいと聞いている。

だから体調は大丈夫なのだと思うけど・・・あの日、あんな行動を取った私を、黒崎さんはどう思っているのだろうか。


(緊張する・・・。でも、怖いけど会いたいし・・・ママからお見舞いの品も頼まれているし、お花だって買ってきたし・・・)


今更、行かないなんて選択はない。

深呼吸をして胸の鼓動を落ち着かせ、白いドアをノックした。


コンコン。


「・・・はい」

中から、黒崎さんの声がした。

ドキン!と胸が跳ね上がる。

私は、もう一度だけ深呼吸して、横開きのドアをゆっくり開いた。

「・・・こんにちは」

黒崎さんは、テレビ前のソファセットで新聞を読んでいるところだった。

私を見ると、ものすごく驚いた顔をして、その後すぐ、鋭い目つきで睨まれた。


(・・・)


やっぱり、黒崎さんは私に会いたくなかったのかな。

あの日、勝手な行動をした私に怒っているのかもしれない。


(でも・・・)


「すみません、失礼します・・・」

ここまで来たんだ。

入るなとは言われてないのでそのまま入室してしまう。

黒崎さんは、読みかけだった新聞を、乱暴にたたんでテーブルの上に投げ置いた。

「・・・誰か来たらどうすんだ・・・。また、親に黙ってきたのか」

「いえ。今日は、母からお見舞いに行くよう頼まれて」
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