black×cherry ☆番外編追加しました
無事に挨拶をすませると、私は、近くの駐車場まで黒崎さんを送って行った。

久しぶりに見る黒いRV車。

目の前に着いたところで、私は軽く頭を下げた。

「今日は、どうもありがとうございました」

「ああ。・・・とりあえず、ほっとした」

言いながら、きっちりと締めていたネクタイを黒崎さんは少し緩めた。

その仕草に、私はドキリとしてしまう。

「・・・緊張、してましたもんね」

「当然だろ・・・。直前で反対される気がしたし。案の定、本部長は邪魔してくるし」

はあ、と大きく息を吐く。

思い出して、私は少し笑ってしまった。

「でも、最後は認めてくれました」 

「・・・どうかな。あいつはかなり渋々だったし。後になって、何かしら文句つけてくる気もするけどな・・・」

「まあ、あいつのことはどうでもいいか」と言ってひと息つくと、黒崎さんは、スーツのポケットに手を入れた。

そして、リボンのかかった小さな箱を、私に「やる」と差し出した。

「え?」

突然のことに、一瞬時が止まるよう。

まさか・・・、と、高鳴る思いで受け取ると、ゆっくりとその小箱を開けた。


(!)


小さな石をはめこんだ、可愛らしい華奢な指輪が現れた。

私は、黒崎さんのことを見上げる。

「あ、あの、これ」

「・・・婚約指輪。結婚前提って、おまえの親から許可が出たから」

「!」


(・・・どうしよう・・・すごく嬉しい・・・)

 
もう、胸がいっぱいだった。

取り出すと、私は早速、左の薬指にはめてみた。

「かわいい・・・。嬉しいです・・・。どうもありがとうございます」

「・・・外すなよ。おまえは、すぐヘンな男に引っかかるから」

「だ、大丈夫です、もう・・・」

こうして心配されるのは、なんだか少し、くすぐったかった。

けれどなにより、私はとても幸せだった。
< 295 / 318 >

この作品をシェア

pagetop