black×cherry ☆番外編追加しました
「あっ・・・そうしたら、私もなにかプレゼントしたいです。なにがいいですか」

婚約指輪のお返しに。

男の人なら、腕時計とかネクタイとかかな。

尋ねると、黒崎さんはふっと笑った。

「いいよ、別に」
 
「でも・・・本当にすごく嬉しくて。私も、なにかお返ししたいです」

見上げると、黒崎さんは少し考えるような顔をした。

そしてポツリと返事する。

「・・・じゃあ、釣り道具」

「えっ」

予想外のリクエスト。

けれど、黒崎さんならそういうものがいいかもしれない。

「わかりました!釣り道具ですね」

「・・・嘘だよ。本気にすんな」

からかうように笑われた。

黒崎さんの冗談は、私にはわかりにくかった。

「本来おまえ大学生だろ。別に、おまえからモノとかいらない」

「でも・・・」

「ほんとに。オレは、おまえがいればそれでいい」

「・・・!」

驚く私に、黒崎さんはキスをした。

「これでいい」って、言うように。

「・・・本部長に殴られそうだな」

黒崎さんがまた笑う。

私の身体は、最大級に熱っぽい。

「まあいいか。オレの思う範囲でいいっておまえの親父に言われたし」

清く正しい交際を。

パパは、黒崎さんにそれを委ねた。

「そうだろ?」

甘い目線で問いかけられた。

私は、その視線をそらせずに、引き込まれるように頷いた。




どこからかまた、金木犀の香りが漂う。

鼻先を僅かに揺らすと、黒崎さんは、もう一度私にキスをした。

甘く、優しく。

まるで、大切な宝物に触れるように。








  ☆  ☆  ☆  E  N  D  ☆  ☆  ☆    




  お読みいただき、どうもありがとうございました!!









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