black×cherry ☆番外編追加しました
車が走り出して数分。

久しぶりの助手席で、一人緊張していると、黒崎さんがチラリと私に目を向けた。

「なんか、今日顔が違うな」

予想外の第一声。

とてもドキドキしていたけれど、気が抜けて、緊張が少しほぐれた。

「あ、えっと・・・変ですか?」

「いや。そうじゃないけど。化粧が違うのか」

「はい。今日は母がしてくれたんです。メイクとか、すごく得意で・・・あっ、コンサートの時も、母がしてくれたんですよ」

説明すると、黒崎さんは「ああ」と頷く。

「確かに、あの時と感じが似てる」

ママのメイクは、そんなにいつもと違うかな。

確かに、私がやるより上手だし、濃い感じにはなるんだけれど・・・。

「お化粧は、薄い方が好きですか?」

思わず、気になって問いかけた。

できるだけ、黒崎さんの好みに近づきたいと思ったから。

「いや、別に。どっちでも」

「・・・どっちでも・・・」

こんなことを聞いて、また、面倒くさいって思われたかな。

少し不安に思っていると、黒崎さんは言葉を足した。

「濃ければ綺麗だし、薄ければ可愛いし。どっちでもいいよ、おまえは」

「!」

飄々とした横顔に、私の頬は自然と熱くなっていた。

黒崎さんの「どっちでもいい」や「どこでもいい」は、本当に、そのまま言葉の通りみたい。


(じゃあ、今日は「綺麗」って思ってくれているのかな・・・)


それなら嬉しい。

今日のデートは、そんな幸せ気分で始まった。












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