black×cherry ☆番外編追加しました
「お礼させてほしいから名刺渡そうとしたんだけど。受け取ってくれなかったの」

「そうなんですか・・・」

「うん。せめてクリーニング代くらい渡せれば良かったんだけど・・・それもいいって言われてしまって。シャツも血で汚しちゃったのに。悪いわよねえ」


(・・・えっ!)


「血って・・・私の血ですか!?」

「そうよお。膝擦りむいてるでしょ。多分、そこの血だと思うけど」

はっと自分の膝を見ると、じんわりとにじんでいた血が、拭き取られたような跡を描いている。

多分、そうだ。ここの血だ。

「ど、どうしましょう・・・!黒崎さん、後になって怒るかも・・・」

お世話になったとはいえ、怖い印象は強いまま。

シャツの汚れを後でまじまじと見たときに、チッと舌打ちをする黒崎さんの姿が浮かんだ。

すると。

「『黒崎さん』・・・って、咲良、知り合いなの?」

さらっと呟いた名前の部分を、佐和子おばさまは聞き逃さなかった。

バックミラー越しに丸い目を向けられて、私はなんとなくバツが悪い気持ちになった。

「はい・・・知り合いってほどではないんですけど・・・知ってます」

「ちょ・・・やだやだ!なんの知り合い!?」

佐和子おばさまのテンションが、突然おかしくなってきた。

ドキドキとしながらも、私は事実を告げてみる。

「前に私が警察にお世話になった時の・・・刑事さんです」

答えると、佐和子おばさまは「えーっ!」と興奮してしまう。

「刑事って!じゃあなに?もしかして連絡先とかわかるわけ?」

「い、いえ、星の宮署の方ってことしか知りません」

「十分じゃない!苗字もわかっているんだし・・・。直接警察署に連絡するのもありだけど、昭一さんに頼んだら一発で連絡取れるわね」
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