black×cherry ☆番外編追加しました
その後もいろいろ話をしながら、佐和子おばさまは羽白総合病院まで私を連れて行ってくれた。

踏み入れた日曜の外来は、ガランとして人気がなくて、とても寂しい雰囲気だ。

本来、休日診療の患者さんは救急外来で診察なので、一般外来は電気が消えている状態。

おばあさまには内緒なので、当直の先生にだけ、ここでこっそりと診てもらうのだ。


(わがまま言っちゃったよね。他の患者さんが落ち着いていればいいけれど・・・)


パパは自宅に持ち帰った書類仕事が忙しく、病院までは来れないそうだ。

明らかに、病院長の娘のわがまま。

付き合わせる当直の先生には、申し訳ないと今更思った。

「当たり前だけど、休日の外来って静かだね」

佐和子おばさまの呟きに、私は「はい」と頷いた。

薄暗い広い空間にたくさんの椅子が並んでいる中、座っているのは私たちだけ。

ひとりだったら、本当に寂しくて心細くなりそうだ。


(おばさまが付き添ってくれてよかったな・・・)


考えながら、先生が来るのを待っていると、廊下を歩く足音が聞こえ、それがだんだんと近づいてきた。

振り向くと、当直の先生であろう、線の細い長身の男性がこちらに向かって手を上げた。


(あ・・・)


「お待たせしました。申し訳ありません。こんな薄暗いところでお待たせしまして」

早川先生だった。

私は、婚約者らしいその人を、不思議な気持ちで見つめていた。

「咲良ちゃん、久しぶり」

「あっ、はい・・・・。すみません、お忙しいところ」

「いや。今日は結構ヒマなんだ。大丈夫だよ」
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