black×cherry ☆番外編追加しました
目が合うと、早川先生はそう言って甘く笑った。

私は、なんとも言えない気持ちになって、すぐに目をそらしてしまった。

「歩ける?」

「はい。ゆっくりなら」

先ほどは、起き上がれないほど痛みがあった足だけど、今は少しだけ落ち着いていた。

支えてくれる佐和子おばさまに右手を預け、のろのろと椅子から立ち上がる。

けれどやっぱり、痛みで少しふらついた。

すると、早川先生は私の左側に素早く回って、「こっちもつかまっていいよ」と、私に腕を差し出した。

「いえ!大丈夫です」

「遠慮しないで。杖代わりになるからさ」


(・・・そう言われても・・・)


看護師さんなら、甘えられたかもしれない。

けれど早川先生の白衣の腕は、簡単には触れられなかった。

「咲良、甘えさせてもらったら」

「でも・・・」

「・・・じゃあ、こうしようか」

「!」

先生は、私の左手を取ってきゅっと握った。

突然の行動に、心臓が大きく跳ね上がる。

「こうすれば、急にふらついても支えられるでしょ」

「いえ、あの・・・」

「とりあえず、診察室に行くからね」

有無は言わさず、早川先生はそのまま私を診察室へと誘導した。

佐和子おばさまも、先生の行動に少し驚いているようだった。

「じゃあ、ここ座って」

診察室に入ると、早川先生は私を椅子に座らせた。

そしてその場にしゃがみこみ、足の診察を開始した。
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