black×cherry ☆番外編追加しました
独身男が、寄ってたかって岡本に訴えかけている。

今はまだギリギリ休み時間だが、うるせえ、と思ったオレは、無意識のうちに舌打ちをした。

岡本の周りが急に静かになった。その時。

「黒崎いるか」

部屋に入って来た市谷さんが、静かな声でオレを呼ぶ。

返事をすると、「ちょっと」と手招きをされたので市谷さんの元へ行く。

「なんですか」

「岩田本部長が、おまえに用事があるってわざわざ来てる。応接室で待ってるから。すぐ行ってこい」

「・・・は?なんで本部長が・・・」

「さあ。署長から伝言を頼まれただけだから。用件はわからない」

「・・・」

本部長が、オレに会いに来てるだと?

わざわざこんな時間に出向いて、オレに用事って一体なんだ。


(・・・まさか、また羽鳥咲良か・・・?)


数日前の、釣り場でのことを思い出す。

本部長の急用なんて、あいつのことしか考えられない。

けれどあの日、なにも不備はなかったはずだ。伯母に無事引き渡したし、足も悪化させていないはず。


(まさか、『なんで病院まで付き添わなかった!』とか言い出したりしねえだろうな・・・)


あの銀縁眼鏡野郎なら、あり得ない話じゃない。

オレは大きく息を吐き、刑事課の部屋を出て行った。










< 55 / 318 >

この作品をシェア

pagetop