black×cherry ☆番外編追加しました
「失礼します」

ノックをして応接室の中に入ると、岩田本部長は窓の近くに立っていた。

外を眺めていたのだろうか。

振り向いてオレの姿を認めると、薄気味悪い笑顔になって、こっちに近づいてきた。


(うわ、なんなんだ・・・)


嫌な汗が背中を流れる。

何か企んでいるとしか思えない。

左遷とか言ったらさすがに抵抗してやるぞ。

・・・と、そんなことを思っていたが。

「黒崎!ありがとう!!」


(・・・は?)


突然、オレの右手を本部長が両手で握った。


(・・・っ!)


寒気がする。本当に一体なんなんだ。

「この前、咲良を助けてくれたそうじゃないか!すごく助かったって、伯母の佐和子さんが言っていた」

「・・・ああ」


(そうか。親戚なんだから伯母と伯父でつながりがあるのか)


あの人は、最後までお詫びと礼を言っていた。

伯母の彼女が経緯を話してくれたなら、本部長にも悪いようには伝わっていないはず。

「ありがとうな。咲良はもう大丈夫だ!!まだ少し痛むみたいだが、バイオリンの練習にも行けている」

「そうですか」

痛そうな顔と、折れそうな細い足を思い出す。

折れてなかったようだから、それはよかったとは思う。

「それでだな、おまえに礼をしたいと咲良と佐和子さんが言っていて」

本部長はやたら上機嫌。

けれどオレは、食い気味に話を切った。
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