black×cherry ☆番外編追加しました
突然のお誘い。

私はわあっと嬉しくなった。

「ミカちゃんの人形展なんてやっているんですか」

「うん。生誕40周年記念らしくてね。星の塔美術館で今日までなんだ。予約制で、残念ながら二枚しかチケットが取れなかったから・・・佐和子さんと黒崎には悪いんだけど」

おじさまがチラッと目線を投げかけると、佐和子おばさまは「あら」と笑顔で首を振る。

「いいのよ。私はあまり興味がないし、黒崎さんも『ミカちゃん人形』って感じじゃないものねえ」

「はい。お気遣いなく」

佐和子おばさまの言葉に、黒崎さんも同意する。

すると佐和子おばさまは、嬉しそうに「ウフフ」と笑った。

「じゃあ黒崎さん、私たちはどこかでお茶でもして帰りましょ」

「・・・いえ。申し訳ないですが、オレは食事が済んだら帰ります。夕方から用事もあるので」

佐和子おばさまのお誘いを、黒崎さんは無表情で断った。

「えー」と残念そうなおばさまに、昭一おじさまがすかさず助け船を出す。

「なんだなんだ、つれないじゃないか。せっかく誘ってくれているのに。なんだ、用事って。また釣り関係か」

「・・・いえ、ちょっと」

「ちょっとって・・・どうせ大したことないんだろう。そっちは延期かキャンセルにしろ。佐和子さんは基本忙しい。今度いつ会えるかわからないぞ」

「・・・いや、別に・・・」

「別にじゃない!佐和子さんとお茶してけ!これは上司命令だぞ!!」

おじさまの押しに、黒崎さんは怖い顔をしたけれど、言葉は発さず押し黙る。

確実に、なにかを我慢している感じで、見ているこっちがハラハラとした。

「ったく・・・。まったくなあ・・・そんなんだから奥さんにも逃げられて、彼女だってできないんだ」

「・・・」
< 65 / 318 >

この作品をシェア

pagetop