想いが溢れて
いつものにがいひ。
「ねぇ、」
「……」
「ねぇって!」
「なに…」
「聞いてた?」
「あーワリ、聞いてなかった」
「ヒロなんて知らない!」
あーあ。行っちゃった。
キット彼女は、なにか大切なことを言っていたのだろう。
大きな目に今にも零れそうなほどの涙を溜めて。
事の発端は俺、橘 裕樹(たちばな ひろき)の親友である八重 将大(やえ まさひろ)の何でもない会話だった。
元々俺は、いわゆるプレイボーイというやつで女癖が悪かった。
そんな俺を見かねたマサは、俺に言い放った
「とりあえず、芙佳(ふうか)ちゃん落としてみますか。」
意味がわからない。
なんで俺の女癖を治すために、女を落とすのか。