冬の恋、夏の愛
⑤
昼間は高校野球、夜はナイター。野球がますます楽しくなるシーズンがやってきた。
今日は、仕事終わりにハマスタで野球観戦。さすがにプレイボールには間に合わないけれど、夜の風に吹かれながら、ビールを飲みながらの観戦は、気分がいい。
「こんばんは」
羽島さんがいくらか遅れてやってきた。野球を観たいって言うから、チケットを取って渡していた。
「あの、チケット代……」
「いらない。それどころじゃない」
横浜ベイブルースがチャンスのところで話しかけてくるから、顔も見ずに言い放った。
せっかく、先制のチャンスだったのに……。スタンド全体からため息が漏れた。
「関さん、どうぞ」
オレに冷たく言い放たれても、羽島さんは笑顔を見せた。気をきかせて、ビールを買って渡してくれた。
「チケット代、おごってもらったから」
「あ……。ありがとう」
そこは素直に受け取ると、ビールで乾杯をした。
「今、どっちの攻撃ですか?」
スコアボード、見て? アナウンス、聞いて? 書いてあるし、言っているから。そう思いながら、ぶっきらぼうに答えた。
「ああ、そうなんですね」
わかっているのやら、いないのやら。とりあえず放置して、観戦に集中する。
「関さん、あの……」
「ごめん。話すのなら、イニング間にしてくれる?」
オレは試合、観ているんだから。羽島さんだって、仕事帰りにわざわざ来たんでしょ? オレと話している場合じゃないよ?
そういう思いが、口調に表れてしまった。
「ごめんなさい」
羽島さんはそれっきり、無口になった。それはそれで気になって、試合に集中できなくなった。
羽島さんにかわいそうなことをした。これから野球はひとりで観にこよう。
今日は、仕事終わりにハマスタで野球観戦。さすがにプレイボールには間に合わないけれど、夜の風に吹かれながら、ビールを飲みながらの観戦は、気分がいい。
「こんばんは」
羽島さんがいくらか遅れてやってきた。野球を観たいって言うから、チケットを取って渡していた。
「あの、チケット代……」
「いらない。それどころじゃない」
横浜ベイブルースがチャンスのところで話しかけてくるから、顔も見ずに言い放った。
せっかく、先制のチャンスだったのに……。スタンド全体からため息が漏れた。
「関さん、どうぞ」
オレに冷たく言い放たれても、羽島さんは笑顔を見せた。気をきかせて、ビールを買って渡してくれた。
「チケット代、おごってもらったから」
「あ……。ありがとう」
そこは素直に受け取ると、ビールで乾杯をした。
「今、どっちの攻撃ですか?」
スコアボード、見て? アナウンス、聞いて? 書いてあるし、言っているから。そう思いながら、ぶっきらぼうに答えた。
「ああ、そうなんですね」
わかっているのやら、いないのやら。とりあえず放置して、観戦に集中する。
「関さん、あの……」
「ごめん。話すのなら、イニング間にしてくれる?」
オレは試合、観ているんだから。羽島さんだって、仕事帰りにわざわざ来たんでしょ? オレと話している場合じゃないよ?
そういう思いが、口調に表れてしまった。
「ごめんなさい」
羽島さんはそれっきり、無口になった。それはそれで気になって、試合に集中できなくなった。
羽島さんにかわいそうなことをした。これから野球はひとりで観にこよう。