冬の恋、夏の愛
仕事帰りに涼介と飲むときは、決まってなじみの焼き鳥屋。商店街に昔からある、カウンターしかない小さな店だ。

「いらっしゃい!」

ガラガラと、少々建てつけの悪い扉を開くと、いつも元気な声で出迎えてくれた。

「あとでふたり、来るから」

あとでふたり来るって……。涼介のひと言に、目を丸くした。

「男ふたりで飲むより、いいだろ?」

オレの反応に、すぐに気がついた涼介が、肘でつついた。羽島さんは、オレに愛想を尽かしたばかりなのに。今回は、本当に余計なお世話だ。

「それで。どうなんだよ?」

ニヤニヤと笑いながら、涼介が注文したビールをオレに手渡した。

「どうなんだろう、ね?」

ジョッキを合わせてボソリとつぶやくと、ビールを口にした。冷えたビールはうまいが、羽島さんとの関係は非常にまずい。なんて、言えるわけがない。

「なんだよ? そのごまかし方は!」

涼介の中で、ふたりはうまくいっていることになっていそうだ。冷やかすような口調で言った。

「まぁ、そのうちわかるよ」

オレのひと言に、ふふんと笑った。悪いな、涼介。せっかくオレと羽島さんを引き合わせてくれたのに。なにも始まらないまま、終わってしまったよ、オレたち。

今日、羽島さんは来ない。そう思っていた。

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