冬の恋、夏の愛
羽島さんを連れて、地元まで帰ってきた。駅からほど近い小さなコーポの二階が我が家だ。

「狭いけれど」

寒い中、電車を待つよりはいくらかマシだろう。そう思いながら、羽島さんを招き入れた。

「おじゃまします」

羽島さんは落ち着きなく、キョロキョロとしている。物をゴチャゴチャ置くのが嫌いだから、わりと部屋は片付いていると思うけれど。

「関さん、意外と部屋が片付いていますね」

『意外と』は、余計。片付いている、と言うよりは、部屋に物を置きたくないだけ。そう思いながら、リュックの中に下着やら、服やらを適当に詰め込んだ。

「部屋、好きに使って」

それだけ言って部屋を出ようとしたときだった。

「待って!」

グッと手首を掴まれた。羽島さんに背を向けたまま、ピタリと足を止めた。手の温もりを感じると、胸の鼓動が加速した。

「できれば、いてほしいです……」

ゆっくりと、羽島さんに視線を送った。耳まで真っ赤にしてお願いされると、出るに出られない。

「……わかった」

返事をすると、掴まれた手首を解放された。理性を保てる自信はないけれど、とりあえずリュックの中に入れたものを、引き出しに片付けた。

「コンビニに行ってきてもいいですか?」

「ああ。あ、ダメ」

一度、返事をしたものの、夜道をひとりで歩かせるのは危険だと思った。

「え? あっ、お店とかスマホでみつければ、わかりますから。ひとりで大丈夫」

「ダメだ」

上から言葉をかぶせるようにしてもう一度、強く言った。羽島さんは、自分のかわいさに全く気づいていない。おかしなヤツに連れさられたら、どうするつもりだ?

「あ……では、一緒に行ってくれますか?」

良かった。うなずくと、ふたり一緒に部屋を出た。


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